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 2016年6月3日に施行された「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(解消法)、そして7月1日に全面施行された「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」(市条例)は、人種差別およびその扇動を抑止することを目的とした日本初の画期的な法令です。解消法が具体的な措置を定めない理念法であるのに対して、市条例ではヘイトスピーチの拡散防止措置及び認識等の公表と具体的措置を定めています。そのなかにはヘイトスピーチを行った者や団体の、名前を公表するという措置が含まれています。しかし、これだけで確信犯的にヘイトスピーチを繰り返している者や団体の活動を食い止めることは困難です。現に条例制定以降も大阪市役所前において定期的にヘイトスピーチ街宣が繰り返されてきました。

 

    また、ヘイトスピーチは日本に存在する人種差別のひとつの表れに過ぎません。これ以外にも、入居、就職、結婚、契約行為などにおける深刻な人種差別が存在しています。しかし日本には未だ人種差別全般を禁止し、被害者を救済する法令は存在しません。

 

    人種差別の撤廃は被害者個人や民間のみに委ねられるべきものではなく、本来は国際条約等に基づく国や地方自治体の責務であるはずです。しかし1971年の就職差別事件以来、人種差別をなくすための取り組みの大半を民間団体が担ってきました。

   

    時には訴訟にも発展する人種差別撤廃の取り組みにおいては、現状では民間団体の働きと、専門的な知識と経験を有する弁護士や研究者による支援が不可欠です。しかしながら、人種差別の被害を受けた人の多くは、そうした支援者とつながることができず、あるいは訴訟費用等の財政的な負担の重さから、泣き寝入りを強いられています。

 

    繰り返しますが本来、人種差別撤廃と被害者の救済は国や地方自治体が取り組むべき課題です。しかし、市条例においても当初案に含まれていた被害者への訴訟支援が削除されてしまいました。そこで私たちは、公的なサポートが実現するまでの間、民間の立場から人種差別の被害者がこれ以上泣き寝入りをすることなく、支援者とつながり、財政的な負担を心配することなく救済を求めることができる仕組み作りをめざして、本基金を設立します。

 

    人種差別撤廃は、日本社会に生きる者全てが取り組むべき社会的課題です。その解決のための基金の取り組みを、ひとりでも多くの皆さんが支援していただけることを心よりお願いいたします。

 

 2017年4月24日

               人種差別撤廃サポート基金

共同代表 菅充行(弁護士、堺筋共同法律事務所)

                        宋貞智(NPO法人ぱだ理事長)

​人種差別撤廃サポート基金について

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